それは風の強い、冷え込みが厳しい冬の夜のことでした。家族が寝静まり、私もそろそろ就寝しようとキッチンで最後の一杯の水を飲んでいた時、屋外から聞き慣れない異音が聞こえてきたのです。シャーという激しい水の流れるような音は、静まり返った夜の住宅街で異様な存在感を放っていました。不審に思い勝手口を開けて外を確認すると、壁に設置された給湯器の下から、まるで蛇口を全開にしたかのような勢いで水が噴き出していたのです。足元はすでに水たまりを通り越し、小さな池のようになっていました。一瞬、頭の中が真っ白になりました。これまで給湯器にトラブルが起きたことなど一度もなく、メンテナンスも意識したことがありませんでした。しかし、このまま放っておけば水道代が恐ろしいことになるだけでなく、隣家の方まで水が流れていってしまうかもしれないという恐怖が私を突き動かしました。私は家の中に飛び込み、スマートフォンで必死に「給湯器、水漏れ、大量、止める方法」と検索しました。検索結果には、まず給水栓を閉めること、そして電源を切ることが先決だと書かれていました。懐中電灯を手に取り、震える手で給湯器の下部を照らしました。いくつもの配管が複雑に絡み合っていましたが、タグがついている栓を見つけ出し、それを力一杯回しました。数回回すと、あれほど激しく響いていた水の音がピタリと止まりました。心臓の鼓動だけが耳元で大きく鳴り響く中、私はようやく一息つくことができました。しかし、安心したのも束の間、明日からのお風呂や料理はどうすればいいのかという現実的な問題が頭をよぎりました。深夜のため修理業者に電話をかけることも憚られ、その夜は不安な気持ちを抱えたまま布団に入りました。翌朝、一番にメーカーのサービス窓口に連絡をしました。電話口の担当者は非常に冷静で、昨夜の私の対応が正しかったことを教えてくれました。数時間後に到着した修理スタッフの方は、手際よく給湯器のカバーを外して内部を点検してくれました。原因は、配管の継ぎ目にあるパッキンの劣化と、寒さによる微細な亀裂からの破裂だったそうです。長年使い続けていたことで、各部の劣化が同時に限界を迎えた結果の大量漏水でした。修理スタッフの方は「夜中に気づいて止めることができて本当に良かったですね」と言ってくださいました。