トイレの水を流した後、便器内の水位が一度グッと上がり、その後ゴボゴボという音を立てながら、時間をかけてゆっくりと引いていく。この現象は、トイレが完全に詰まったわけではないため「まだ大丈夫」と軽視してしまいがちですが、実は排水管が発している非常に危険なSOSサインです。これは、本格的な詰まりや汚水の逆流という最悪の事態への最終警告であり、この段階で正しく対処することが何よりも重要になります。 この「少しずつ流れる」状態になる原因は、排水管の通り道が何らかの理由で狭くなっていることにあります。一度に大量のトイレットペーパーを流した、水に溶けないティッシュや掃除用シートを誤って流してしまった、長年の汚れや尿石が管の内側に蓄積している、などが主な要因です。水の通り道が狭くなっているため、普段通りの水量が一度に流れず、時間をかけてゆっくりと排水されているのです。 この状態になった時、絶対にやってはいけないのが「もう一度流してみる」ことです。排水が追いつかず、便器から汚水が溢れ出てしまう危険性が非常に高いです。まずは、しばらく時間を置いてみましょう。原因がトイレットペーパーであれば、水にふやけて自然に流れる可能性があります。 次に試せる有効な手段が、ぬるま湯を流し込むことです。バケツ一杯のぬるま湯(40〜60度程度)を、少し高い位置から静かに注ぎ込むことで、トイレットペーパーや付着した汚れを溶かす効果が期待できます。ただし、熱湯は便器の陶器を傷める危険があるため絶対に使用しないでください。それでも改善しない場合は、ラバーカップの使用を検討しますが、固形物を落とした心当たりがある場合は逆効果になるため、すぐに専門業者を呼びましょう。 「少しずつ流れる」は、トイレが自力で排水できる最後のチャンスです。このサインを見逃さず、早めに対処することが、突然の逆流トラブルを防ぐ最も賢明な選択と言えます。